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ナショナル・ジオグラフィック

今まで、「移植」と言えば、臓器。一番良く聞くのは心臓で、肝臓、膵臓、腎臓、目では角膜移植でしょうか。

しかし、「顔面移植」と聞いて、
あなたはどんなイメージを持ちますか?

歴史に出てくる鉄仮面みたいな感じですか?
顔を移植したら、別人になってしまわない?
目は、移植しないよね。
そもそも、顔を移植するってどんな怪我を負っているの?
単なる「皮膚移植」だけではないですよね?
日本で「顔面移植」の実例があるの?

こんな疑問を持ってしまいます。

ドナーの顔がトレーに乗せられていた。

米国オハイオ州のクリーブランドクリニックでは、外科医チームが16時間前から細心の注意を要する作業に取りかかっていた。3日前に法的にも医学的にも死亡宣告された31歳の女性の顔を摘出する手術だ。摘出された顔は、新しい顧を待つ21歳の女性ケイティ・スタブルフィールドさんに移植される。

クリーブランドクリニックでの「顔面移植」は3例目で、知られている限り、全世界では40例だそうだ。

「なんて尊いことだ」
形成外科医フランク・パペイ氏は思ったそうです。死後心臓や肝臓を提供するだけでなく、顔まで提供する人たちがいると。

ケイティさんが顔を失ったのは18歳の時

恋人の携帯を覗いてしまったケイティ。そこには、別の女の子からのメッセージがありました。問い詰められた恋人は、ケイティに別れを告げます。

ケイティは逆上して、兄ローバートのところに行きます。怒りに任せて、誰かにメッセージを送ると、部屋の中を歩き回ります。兄は心配になり、部屋を出て母親に連絡をしていたその時、

パーン!

ケイティは兄の猟銃で、自分の顎を撃ち抜き、自殺を図りました。銃弾は、口全体、鼻、鼻腔、額の一部を奪いました。目は残っていましたが、すごい損傷を受けていたといいます。また、前頭葉、視神系、脳下垂体が強くゆさぶられ損傷もしていました。

「自殺なんて、一度も考えたことはなかったから、何があったか聞かされて、どう受け止めていいかわからなかった。家族をとても苦しめた自分が許せなかった」

「シュレック!」

彼女は、自分の顔をそう呼んだ。

顔面移植はまだ、実験段階。

2016年当時、顔面移植を受けた36人のうち、6人が死亡。だが、ケイティにとって、手術を受けないという選択肢はありません。

2017年5月4日手術。
午後3時ドナーからの顔面摘出から31時間後、移植は完了し、手術は成功。

両親と兄ロバートは、集中治擦室に移されたケイティの顔を見た。父はガストマン医師が撮った写真を見ていたので、特にショックを受けなかった。兄のロバートは、妹の新しい特徴に気づいた。顎に小さなえくぼがある。母アリシアは心の中でつぶやいた。「あなたには18歳までの顔と18歳から21歳までの顔があった。そして今、この顔になったのね」。新しい顔に以前の娘の面影を探したが、見つけられなかった。

顔とは何だろうか?

自分の顔が激しく損傷し、「誰か」別の顔が移植されたら、自分と思えるだろうか?
鏡を見るたび、以前の自分ではなく、そこにあるのは別の顔。もう慣れるしかないと納得するまでどのくらい時間が必要になるのだろうか?

私たちは鏡に映った顔を見て、それが白分の顔だと認識します。動物でも例外的なことだといいます。人間以外でこうした能カをもつ動物は、大型の類人猿、アジアゾウ、カササギ、ハンドウイルカだけしか知られていないそうです。

実際の写真や動画を見たい人はこちらの記事を参照してください。
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