朝一番の大衝撃!
Contents
『老害の人』いるいる、こういう人。迷惑なの!って俺かよ?
「老害」っていう言葉、久しぶりに見ました。今は死語かと思っていましたが、「まわりにたくさんいる」ってことは、目にしないだけでかなりの人々が被害にあっているのですね。
でも、私は昔話や説教はしません。話すほど偉くはないし、会社でいい役職についていたこともありませんので、そもそも語ることがありません。だから、「老害」には無縁です。でも、自分で気がついていないだけかもしれません。「当の本人はまったく気づいていないものだ」
「老害の人」Amazonで検索してみました。レビューはまだ一つだけしか出ていません。2022年10月17日発刊ですからこれからですね。
★★★★★ 老害の人の群像劇を楽しめました!
昔話に説教、趣味の講釈、病気自慢に孫自慢。そうかと思えば、無気力、クレーマー。まさに老害の人あるあるだ。(カバーの)若鮎サロンstaffのお揃いピンクTシャツには笑ってしまう。何だかとても似合っていて微笑ましいのだ。装丁も黄色とピンクのコントラストが美しくセンスが光る。
「高齢者小説」シリーズで、他に3冊『終わった人』『今度生まれたら』『すぐ死ぬんだから』も出てきました。
それぞれの試し読みが数ページ出てきますので、読んでみました。面白い! 65歳以上の方、ぜひ試し読みだけでも読んでみてください。
『今度生まれたら』試し読みを開いたら「この人とは結婚しない」と冒頭にありました。うちの女房も同じだと思ってしまいました(笑or涙?)。
著者・内館 牧子
1948年秋田市生まれの東京育ち。武蔵野美術大学卒業後、13年半のOL生活を経て、1988年脚本家としてデビュー。小説家、エッセイストとしても活躍し、2015年刊行の小説『終わった人』は2018年に映画化、続く『すぐ死ぬんだから』『今度生まれたら』は、それぞれBSプレミアムで連続ドラマ化、3部作で累計90万部を超える大ベストセラーになっている。
1991年・ギャラクシー賞
1993年・第1回橋田壽賀子賞(「ひらり」)
1995年・文化庁芸術作品賞(「てやんでえッ!!」)
2001年・放送文化基金賞(「私の青空」)
2011年・第51回モンテカルロテレビ祭テレビフィルム部門最優秀作品賞およびモナコ赤十字賞(「塀の中の中学校」)など受賞多数。
『老害の人』そろそろ、お引き取り下さいな
自分がどれほど「老害の人」かということに、当の本人はまったく気づいていないものだ。たとえ、白分が後期高齢者枠にあろうがだ。
自分は実年齢よりずっと若くて、頭がしっかりしていて、分別がある。その自信がある。男女ともにだ。そうではない老人を見ると、彼らをいたわったりさえする。「誰だってトシ取りゃ、思うようにはできませんよ。大丈夫、あなたは十分にできている方ですって。見ためもすごくお若いし。白分も見習わないと」
そして、心の中で「こうはなりたくないねえ。まわりの若い人に負担と迷惑をかけるのだけは、絶対にヤだねえ」と思うのだ。
自分がすでに「老害の人」として、まわりの若い人にどれほど負担と迷感をかけているか。そんなことは考えもしない。
そんな老人が、若さや頭脳や分別を自任したところで、たかが知れている。それより、自分が「老害の人」ではないかと、時々考えるべきだろう。というのも、若い人がやんわりと遠回しに「そろそろ、お引き取り下さいな」とでも言うか。まず言わない。
Amazonレビュー★★★★★
「終わった人』定年って生前葬だな
定年って生前葬だな。
俺は専務取締役室で、机の置き時計を見ながらそう思った。あと20分で終業のチャイムが鳴る。それと同時に、俺の40年にわたるサラリーマン生活が終わる。63歳、定年だ。
明日からどうするのだろう。何をして一日をつぶす、いや、過ごすのだろう。「定年後は思いきり好きなことができる」だの、「定年が楽しみ。第二のスタート」だのと、きいた風な口を叩く輩は少なくない。だが、負け惜しみとしか思えない。それが自分を鼓舞する痛い言葉にしか聞こえないことに、ヤツらは気づきもしないのだ。
63歳、まだ頭も体も元気だ。幾らでも使えるし、このまま専務として残っても、他のヤツらよりずっと働ける。
会社の外には、すでにハイヤーが俺を待っているだろう。定年を迎える最後の日だけ、地位に関係なく男子社員も女子社員も、黒塗りのハイヤーで自宅に送ってもらえる。
そしてそろそろ、花束やテープ、クラッカーを手にした社員たちが、玄関ロビーに並び始めているかもしれない。元気でしっかりしているうちに、人生が終わった人間として華やかに送られ、別れを告げる。生前葬だ。
Amazonレビュー★★★★☆
『今度生まれたら』この人とは結婚しない
無防備に眠りこけている夫の寝顔を見た時、私はつぶやいていた。
「今度生まれたら、この人とは結婚しない」
私、佐川夏江と夫の和幸は、決して仲が悪いわけではない。若い頃の「愛情」は年齢と共に「情愛」に変わり、お万いに大切な人だ。結婚して48年、何の問題もなかったとは言わないが、想い合ってここまで来た。
今も二人でスーパーマーケットにも、外食にも旅行にも行く。人生の最後まで一緒にいるのは当然だし、そんな伴侶がいることを幸せに思う。寝室は50代の頃から別で、それはお互いに一人の方がゆっくり眠れるからという理由だけだ。
今、夫の寝室に入ったのは、深夜に少し寒くなり、押人れの毛布を取りに来たのである。深夜の寝室の空気は冷たい。だが、夫は若い頃から暑がりで、今も薄掛け一枚の下から両脚を出している。
私は毛布を椅子に置き、夫の脚に薄掛けを掛け直した。アカの他人がとてつもない緑で結ばれ、子までなした。だが、今度生まれたら、別の人生を歩きたい。
あの日の衝撃は大きかった。七十歳の誕生日から二週間ほどたった時のことだ。
Amazonレビュー★★★★☆
『すぐ死ぬんだから』実年齢に見られてはならない
孫自慢に、病気白慢に、元気自慢。これが世の爺サン、婆サンの現実だ。この現実を少しでも遠ざける気合いと努力が、いい年の取り方につながる。間違いない。そう思っている私は、今年78歳になった。60代に入ったら、男も女も絶対に実年齢に見られてはならない。
日曜の午後、私は銀座通りを歩きながら、奥が鏡張りになっているショーウィンドウの前で足を止めた。自分の姿を映してみる。
「あのちょっとすみません」
背後から呼び止められた。振り向くと、全然知らない女性が立っている。40代だろうか。
「突然ですが、お願いがございまして」
「私に? 何かの勧誘ならお断りします」
「いえ、お写真を撮らせて頂きたいんですが」
「月刊コスモス編集部グラビア班デスク山本美樹」と印刷されていた。
「月刊コスモス」はシニア向けの雑誌で、実は私も毎月読んでいる。他のシニア誌よりもファッションやメイクのやり方等、要は外見磨きに重きを置いている。他のシニア誌は著名人が人生訓だの生き方だのを説教して、うっとうしい。年を取れば、そのくらいのこと誰だって言えるというレベルの人生訓や生き方だ。
「私どもの雑誌に、『こんなステキな人、いるんです』という人気ページがございまして、ぜひそこに写真を載せさせて頂きたいんです」
あのページに出ろと言うのか。ヤッター信じられない。
Amazonレビュー★★★★☆
終わりに
「高齢者小説」シリーズ4冊『老害の人』『終わった人』『今度生まれたら』『すぐ死ぬんだから』の冒頭数ページを試し読みしてみて、実感できることが山ほど、いや少なからずありました。
自分も高齢者なんだな〜と、感慨深く、いや感慨深くなってはいけない! と無理して思う。年はどうしようもない。
ただ、「当の本人はまったく気づいていないものだ」はよくわかるので、そう指摘してくれる人がそばにいて欲しいと思いました。