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災害から逃げる女性の方がより敏感に危険を察知!

なぜ人は逃げないのか?『正常性バイアス』『同調性バイアス』

(『女性セブン』11月3日号から)

ある地下鉄のホームで車両が燃えている。すると、対向ホームに列車が入線してきた。その列車の乗客は目の前で車両が燃えているにもかかわらず、なぜか座ったまま。2003年、韓国で起きた「大邱(テグ)地下鉄放火事件」での出米事だ。死者192人、148人が負傷するという大惨事だが、災害に遭った人の心理状態を鮮明にした。

地下鉄指令センター側の不手際も大きかったとはいえ、車内の防犯カメラには危険を過小評価する乗客の様子が記録されていた。

どうして逃げないのか?

正常性バイアスとは?

東京女子大学名誉教授(災害・リスク心理学)の広瀬弘忠さんが解説。

「人間は、急激な変化に対しては驚いたり危険だと感じたりするが、じわじわと迫る危険に対しては適応機能が働いて、気づかなかったり"なんともない"と過小評価してしまう。これを『正常性バイアス』と呼びます」

広瀬さんは、被験者が一人でいる部屋に軽い刺激臭のある白煙をゆっくりと吹き込む実験を行った。

すると、7割の人は煙が充満しても室内にとどまった。中には「体にいい煙だと思った」などとポジティブな解釈をした人もいた。

同調性バイアスとは?

また、別の実験だとこうだ。部屋にいる10人のうち1人だけに実験だとは知らせず、非常ベルや消防車のサイレン音を鳴らしつつ室内に煙を入れた。こちらも、ほかの9人が動かなければ、実験だと知らない1人は逃げようとしなかった。

集団の中では、つい他人と同じ行動を取ろうとする心理『同調性バイアス』が働く。"みんなでいれば怖くない"と考えがちです。

大邱(テグ)の地下鉄での行動は、これによるものだと考えられる。周囲の様子をうかがっていると避難が遅れる原因になるが、率先して避難する人がいれば、より多くの人の避難につながるのも同調性バイアスです」(広瀬さん・以ド同)

『女性セブン』11月3日号©️『女性セブン』11月3日号

では、どんな人が逃げ遅れやすいのだろうか。

「遊園地でジェットコースターが好きな人とそうでない人がいるように、リスクを取ることを好む人が一定数いる。

ただし、"ジェットコースター好きだから逃げ遅れやすい"とはなりません。ただ、自分に及ぶ危険を、ある意味で(許容範囲)と捉える人がいる。高難度の山に挑戦する登山家などもそれにあたる」

また、報道などで「台風のとき、田んぼの様子を見に行って川に流された」などというニュースをよく耳にするが、これはどういう心理なのか?

「もちろん、生活の糧である農家の田んぼや漁師の船などを確認したいという気持ちの人が多いと思うのですが、それとは別に、災害を見に行くのを内心、好む人もいる。怖いもの見たさ、というもので、わざわざ自然災害が多発する地域に住みたがる人もいます」

さらに加齢の影響も。
高齢者や、認知の機能に問題が出てくると、危険を感じないだけでなく"感じたくない"と無意識下で判断し、安全であると思い込もうとする働きをしてしまうこともあります」

なんとも不思議な働きだが、正常性バイアスも同調性バイアスも、社会生活を平穏に過ごすために必要なもの。私たちの社会が平和であることの裏返しでもある。

女性の方がより敏感に危険を察知!

女性の方がより敏感に危険を察知!

ちなみに、危険な災害から生き抜くための能力には男女差がある。
男性の方が正常性、同調性どちらのバイアスにも陥りやすい。女性の方がより敏感に危険を察知します。夫婦でいたら、まず奥さんの方が"何かおかしい""逃げましょう"となることが多い」

火事や洪水などの天災から逃げ遅れないためには、どうすればいいのか。

「みんなと同じことをしていれば安全、と考えるのはやめましょう。人と違うことをするのは恥ずかしいと考えていると、助かるものも助からなくなる。また『正常性バイアス』というものが存在し、迫りくる危険が見えなくなっているだけかもしれない、と常に胸に留めておくことも重要です」

誰しもが陥りがちな「リスクの過小評価」というわながある。それを知っておくだけで結果は違ってくる。